「玄米は病気の予防や治療に効く」、「玄米は白米より体にいい」と耳にしたことがあるのではないでしょうか。なぜ体にいいと言われているのか、玄米と白米の違いや栄養などについて調べてみました。
白米と玄米の違い
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- 玄米:稲から籾殻を取り除いたもの。
●白米:玄米を精白したもの。表皮と胚芽を取り除いて胚乳だけにしたものが白米。取り除いた表皮と胚芽はいわゆる米糠(米ぬか)。糠の栄養素が高い。
- 玄米:稲から籾殻を取り除いたもの。
参考リンク:籾(もみ)と玄米、長期保存に向いているのはどっち?
いつから白米中心の食生活になったの?
日本人は全国的に稲作が広まり定着した弥生時代からお米を食べ続けています。江戸時代まで長きにわたり、庶民は雑穀や玄米中心の食生活でした。当時、白米は身分の高い人しか食べられない高級品でした。
精米技術の上がった江戸時代末期~明治時代に入り、庶民の食卓にも白米があがるようになりました。白米中心の食生活になったのは、戦後の高度経済成長期と言われています。
実は、江戸・明治期から、脚気の患者が増えました。脚気とはビタミンB群の不足で起きる病気。重症になると、神経障害で手足が動けなくなったり、心不全などで死に至ることもあります。白米を食べるようになった身分の高い人ほどかかったようで、脚気は「江戸患い」と言われていました。
明治期の日露戦争では、陸軍軍医だった森鴎外が「兵隊さんは偉いのだから、白米を食べさせよ」と提言し、兵士に白米ばかり食べさせました。日露戦争の陸軍戦死者は9万人弱ですが、実は本当の戦死者は3千人。残りの兵士は脚気が原因で亡くなりました。森鷗外は強く責任追求され嫌気が差して、作家に転身したのは有名な話です。
厚労省が勧める「一日30品目」は、白米中心の食生活のため、他の食品で栄養を補う必要があるためなのです。
玄米の栄養
白米から取り除かれる糠(表皮と胚芽)には、以下のたくさんの栄養素や有効成分がぎっしり詰まっています。
・ビタミンB1:神経機能の正常化
・ビタミンB2:皮膚・粘膜の健康維持、赤血球の形成や抗体の生産
・ビタミンB6:神経伝達物質の合成を助ける
・ミネラル:食物の消化吸収、老廃物排泄の活性化
・食物繊維:便秘予防など整腸効果、血糖値上昇抑制、血中コレステロールの低下
・γーオリザノール:自律神経の調節、小じわ・シミの予防
・アラビノキシラン:NK細胞の活性化、抗酸化作用
・イノシトール:肝機能改善、動脈硬化予防、高脂血症改善
・フィチン酸:抗酸化作用、抗がん作用、老化遅延効果、排毒排泄作用
・GABA:精神安定作用、血圧安定作用
・フェルラ酸:認知症予防効果
病気予防になる有効成分が多く含まれているのが分かりますね。また、日本人の食に不足がちなビタミンB群、マグネシウム、鉄、食物繊維を玄米食では補うことができます。玄米はバランス栄養食なのですね。
玄米には毒がある?!
玄米は理想的な健康食ですが、実は玄米の「糠」には以下の3つの毒が含まれています。
①アブシシン酸(ABA):「種」の外皮に含まれる成分。体内に取り込まれると「酵素阻害剤」として、体内の酵素を阻害し、消化不良、下痢など様々な病気の原因になる。
②フィチン酸:上記に有効成分として名をあげた「フィチン酸」。フィチン酸自体は人体にとって必要な成分で抗酸化作用、がん予防効果がある。一方で、ミネラルを吸着し排泄してしまうので有害にもなる。
③アクリルアミド:玄米には含まれていないが、高圧鍋で炊くと発生する発がん性の有害成分。
玄米の正しい食べ方
白米にくらべて桁違いの栄養を含む玄米。一方で、有害成分を含んでもいる…玄米食に賛否両論があるのはこのためです。
さて、それではどのように玄米を食べたらいいのでしょうか。
解決方法があり、いくつかの手順を踏めば安心安全に食べられます。
①長時間(17時間以上)、水に浸す。
②上記①で玄米を浸した水は捨てて、玄米を数回すすぐ。
③高圧鍋で炊かない
玄米の糠に含まれる「アブシシン酸」は、玄米を長時間水に浸して発芽させることで取り除くことができます。「フィチン酸」は長時間水に浸すと、効能はそのままに、体内のミネラルを排出してしまう「悪い癖」を解除できます。
発芽すると発芽毒が出るので、浸した水で炊飯しないこと。よく玄米をすすいで、水を取り替えましょう。
そして、高圧鍋で調理しないこと。高温調理をするとアクリルアミドが発生するので、土鍋や炊飯ジャーで炊飯しましょう。
栄養価の高い玄米食は、白米と違う魅力があることが分かりました。体調を整えたいときは玄米食を上手に取り入れるなど、白米と玄米の食べ分けをしみてもいいですね。